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又走り出して、草の中に鼻を突つこんだ。が、今度はすぐもどつて来た。房一は緊張した表情をつくつて、その背をつかんでぐつと押した。
「あれは本当ですかね、相沢さんが訴訟を起したと云ふのは?」
練吉の口振りが意地の悪いものだつたにかゝはらず、今泉はむしろ話のきつかけを得たことを喜んでいる風だつた。
私はもともとヌル湯好きで、いつまでつかっても汗のでない程度が好きだ。
「さうかの。だが、さう云うても――」
「はい、若先生に代りに行つてもらへとおつしやいました」
口を利くのは半シャツの男だけだつた。恐らく四十前後だらうが、前額のひどく禿げ上つた、痩せ身の、鼻下にちよつぴりした髭をつけている、がそれらを貫いている表情は何か殺気のある精悍さといつたものだつた。口をきく度に、彼の眼は喰ひこむやうに相手を一瞥した。
「いや、わしは出んぞ」と叫んだ。
と、相手は慌ててその筒抜けな声を庫裡の居間に向けて放つた。
「それで、近く片づきさうなんですか」
印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。
今頃になつて、男はさう訊き、盛子がそれに答へる前に、ひとりでうなづいていた。
「消防演習だ?ふむ、よからう。そんなら訊くが、かうしてみんな集つて騒いでいるのは何のためだか知つてるか」